隕石の分析で火星の火山の噴火回数や成長速度を解明
【2017年10月12日 SUERC/University of Glasgow】
火星には高さ21km以上、幅600km以上の「オリンポス山」など、太陽系で最大級の火山が存在する。火星にはプレートが存在しないため、火山は動くことはなく同じ場所にとどまり続ける。すると、噴火のたびに溶岩が新しい層を作り、それが火山の側面で冷えることで火山が大きく成長するのだ。
スコットランド大学連合環境研究センターのBenjamin Cohenさんたちの研究チームは火星の火山について調べるため、火星由来の隕石である「ナクライト」を分析した。ナクライトは1100万年前に火星で起こった天体衝突によって火星の表面から吹き飛ばされた隕石が、宇宙空間を漂った後に地球に落ちてきたもので、火山岩であることがわかっている。
ナクライトの放射性同位体を利用した分析から、隕石を作った火山の成長速度が100万年当たり0.4~0.7mであることが示された。マウナケアのような地球の火山と比べると、1000分の1という遅さだ。さらに、この火山が9000万年間に少なくとも4回噴火を起こしていたことが明らかになった。
火星の火山の成長速度を知るために火星由来の隕石を使った詳しい分析が行われたのは今回が初めてで、地球と火星の火山に大きな違いがあることを示す重要な成果となった。「ナクライト隕石の歴史、つまり太陽系最大級の火山の一つについて、明確な情報が得られました。地球上の火山活動が活発なのはほんの数百万年ほどですが、9000万年で4回以上噴火を起こした火星上の火山の活動スパンは、それよりずっと長いのです」(Cohenさん)。
〈参照〉
- Scottish Universities Environmental Research Centre(SUERC):New research reveals extraordinary lifespan of Martian volcano
- University of Glasgow:New research uncovers 90 million years of history of Martian volcano
- Nature Communications:Taking the pulse of Mars via dating of a plume-fed volcano 論文
関連記事
- 2024/08/07 2024年8月中旬 火星と木星が大接近
- 2024/07/24 火星大気中の塩化水素を全球で検出
- 2024/07/11 2024年7月下旬 火星とプレアデス星団が接近
- 2024/07/08 2024年7月中旬 火星と天王星が大接近
- 2024/06/25 2024年7月2日 細い月と火星が接近
- 2024/06/17 火星の赤道地方の山頂で霜を検出
- 2024/05/27 2024年6月3日 細い月と火星が大接近
- 2024/05/17 初期火星の有機物は一酸化炭素から作られた
- 2024/04/24 2024年5月5日 火星食
- 2024/04/24 2024年5月5日 細い月と火星が接近
- 2024/04/19 2024年4月下旬 火星と海王星が大接近
- 2024/04/04 2024年4月中旬 火星と土星が大接近
- 2024/02/15 2024年2月下旬 金星と火星が大接近
- 2024/01/19 2024年1月下旬 水星と火星が大接近
- 2023/12/15 リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒いわけ
- 2023/08/14 火星の自転はわずかに加速している
- 2023/07/03 2023年7月上旬 火星とレグルスが大接近
- 2023/06/23 2023年7月上旬 金星と火星が接近
- 2023/06/15 2023年6月22日 細い月と金星、火星が接近
- 2023/05/26 2023年6月上旬 火星とプレセペ星団が大接近